電子工作のきほん|#10 トランジスタのしくみと使い方

トランジスタのしくみと使い方 ── 小さな電流で大きな電流をあやつる

電子部品の世界には「20世紀最大の発明」と呼ばれるものがあります。それが今回のトランジスタです。スマホの頭脳の中には、この部品が何十億個も詰め込まれています。働きをひとことで言えば「小さな電流で、大きな電流をあやつるスイッチ」。#08の最後に「大きな電流の調整はトランジスタに任せる」と書きましたが、いよいよその本人の登場です。

電子工作のきほん #10 トランジスタのしくみと使い方(アイキャッチ)

1. トランジスタのしくみ ── 電流で開け閉めできる弁

トランジスタには足が3本あります。名前はコレクタ(C)・ベース(B)・エミッタ(E)。回路記号は丸の中に3本の足が集まった形で、エミッタにだけ矢印がついています。

トランジスタのしくみ(NPN型の記号と足の名前・半導体3層のサンドイッチ構造・小さな電流が大きな電流の弁を開く)

中身は、#09で出てきた半導体です。ダイオードは性質の異なる2種類の半導体(NとP)を貼り合わせた2層構造でしたが、トランジスタはN・P・Nの3層サンドイッチ。両側のNがコレクタとエミッタ、まんなかの薄いP層がベースにつながっています。

働きの主役はベースです。ふだん、コレクタとエミッタの間に電圧をかけても電流は流れません。ところが、ベースからエミッタへ小さな電流をちょろっと流すと、まんなかの層の性質が変わって、コレクタからエミッタへの太い道が開通します。ベース電流を止めれば道はまた閉じる。つまりトランジスタは、電流で開け閉めできる弁なのです。

しかもこの弁は、開きっぷりが豪快です。コレクタに流せる電流は、ベースに流した電流の最大で100〜400倍(2SC1815の場合)。この倍率を直流電流増幅率といい、記号ではhFE(エイチエフイー)と書きます。1の力で100の流れを動かせる——これがトランジスタの威力です。

2. トランジスタの仲間たち ── NPNとPNP・パッケージ

トランジスタにも種類があります。まず大きく分かれるのがNPN型とPNP型です。

トランジスタの仲間たち(NPN型2SC1815・PNP型2SA1015・TO-92とTO-220パッケージ)

いま説明したN・P・Nの並びがNPN型。記号ではエミッタの矢印が外向きです。並びを逆にしたP・N・PがPNP型で、矢印は内向き、電流の向きの考え方もそっくり裏返しになります。電子工作でまず覚えるのはNPN型で十分です。この講座でも、定番中の定番であるNPN型の2SC1815を使います。日本の型番のつけ方では、2SCや2SDで始まるものがNPN、2SAや2SBで始まるものがPNPです。

外側の形(パッケージ)にも種類があります。小さな電流用は、黒いかまぼこ形のTO-92。2SC1815もこれです。アンペア級の大きな電流を扱うパワートランジスタは、放熱用の金属板がついた大きめのTO-220に入っています。発生する熱を逃がすため、金属板をネジで放熱器に固定して使います。

3. 使い方 ── スイッチと増幅

トランジスタの使い方は、大きく2つあります。

ひとつ目はスイッチです。#06のスイッチは指で押しましたが、トランジスタは電流で押せるスイッチになります。これが本領を発揮するのは、マイコンと組み合わせたときです。マイコンのピンから直接流せる電流はごくわずかで、ブザーやリレー、たくさんのLEDを直接は動かせません。そこでマイコンのピンはトランジスタのベースだけを受け持ち、大きな電流の本流はトランジスタに開け閉めさせる。マイコン工作の定番の分担です。

トランジスタでLEDをオン・オフする回路図(電池3V・10kΩ→ベース・330Ω→LED→コレクタ)

回路図を見てみましょう。電池からの道が2本に分かれています。1本は330ΩとLEDを通ってコレクタへ向かう本流。もう1本は10kΩを通ってベースへ向かう細い道です。ベースに電流が流れているあいだだけ、コレクタ→エミッタの弁が開いてLEDが点きます。

ふたつ目は増幅です。マイクで拾った音の信号は、そのままではスピーカーを鳴らせないほど弱い電流です。これをベースに入れると、信号の波の形はそのままに、何十倍も大きな電流の波がコレクタ側に現れます。これが増幅で、ラジオやアンプの心臓部はみなこれです。本格的に扱うのはこの講座の先の話になりますが、「スイッチ」と「増幅」が同じ1個の部品の2つの顔だと知っておいてください。

4. ここに注意 ── 足の並び・ベース抵抗・定格

トランジスタを使うときのつまずきポイントは3つです。

(1) 足の並びを確認する

3本の足は、見た目だけではどれがどれか分かりません。2SC1815は、平らな面を手前にして左からE・C・Bの並びです。やっかいなことに、この並びは型番ごとに違います。同じ形のTO-92でも、海外の定番2N3904は左からE・B・Cと、まんなかが入れ替わります。新しい型番を使うときは、必ずデータシート(部品の仕様書)で足の並びを確認する習慣をつけましょう。

トランジスタの2つのつまずきポイント(足の並びは平らな面を手前にE・C・B・ベース抵抗を必ず入れる)

(2) ベース抵抗を必ず入れる

ベースとエミッタの間は、#09でやったダイオードと同じ構造です。つまり順方向に約0.7Vかけると電流が流れ、それ以上は電圧で踏ん張ってくれません。ベースを電池に直結すると、ダイオードを直結したのと同じで大電流が流れ、トランジスタが壊れます。LEDに330Ωを添えたのと同じ理屈で、ベースには10kΩなどの抵抗を必ず直列に入れます。

(3) 定格を超えない

2SC1815が流せるコレクタ電流は最大150mA、熱として逃がせる電力は400mWまでです。LEDを数個点けるには十分ですが、モーターのようにアンペア級の電流が欲しい相手には足りません。大物を動かすときはパワートランジスタか、次回登場するMOSFETの出番です。「部品には必ず定格がある」——抵抗器の1/4W以来くり返してきた話が、ここでも当てはまります。

5. 確かめてみよう ── 小さな電流で大きな電流をオン・オフ

それでは、トランジスタのスイッチ動作を確かめましょう。使うのは電池ボックス(単3×2=3V)、トランジスタ(2SC1815)、抵抗器2本(10kΩと330Ω)、赤色LEDです。

小さな電流で大きな電流をオン・オフする実体配線図(2SC1815・10kΩのベース線を抜き差しするとLEDが点いたり消えたりする)

トランジスタは平らな面を手前に向けて、E・C・Bの足を列12・13・14に差します。本流は、+のレールから330ΩとLEDを通り、緑のジャンパ線でコレクタ(列13)へ。エミッタ(列12)は−のレールへ落とします。そしてベースへの細い道が、+のレールから列9に差した金色のジャンパ線と10kΩです。

組み上がったら、金色のベース線を差したり抜いたりしてみてください。差すとLEDが点き、抜くと消える。LEDの本流にはまったく手を触れていないのに、です。

ここで電流を計算してみると、この実験の面白さがはっきりします。ベース線に流れる電流は、3Vから0.7V(ベース−エミッタ間の通行料)を引いた2.3Vを10kΩで割って約0.23mA。一方、LEDの本流は約2.7mA流れています。10分の1以下の細い流れが、本流を完全に支配しているわけです。2SC1815のhFEなら0.23mAで最大40mA以上まで開けるので、2.7mAの本流に対しては弁が全開、立派なスイッチとして働きます。

6. まとめと次のステップ

トランジスタは、ベースに流す小さな電流で、コレクタ→エミッタの大きな電流を開け閉めできる部品です。中身はN・P・Nの3層サンドイッチで、倍率はhFE=100〜400倍。足の並びはデータシートで確認し、ベースには抵抗を必ず入れ、定格の範囲で使う。スイッチと増幅という2つの顔を持ち、マイコンが小さな電流しか出せないという弱点を補う、電子回路の大黒柱です。

次の記事では「MOSFET」を扱います。トランジスタの親戚ですが、こちらは電流ではなく電圧で開け閉めする弁。モーターのような大物を動かす実験で、その実力を確かめます。

発展・応用アイデア

もっと知りたい人へ、3つの寄り道です。ひとつ目は「ダーリントン接続」。トランジスタを2個重ねると、増幅率は2個のhFEのかけ算になり、数万倍に達します。ここまで感度が上がると、指先を伝うごくわずかな電流でもLEDを点けられるので、肌に触れると反応するタッチセンサーが作れます。ふたつ目は「増幅の世界」。小さなスピーカーとマイクがあれば、トランジスタ1個の簡単なアンプを組めます。スイッチが全開・全閉の使い方だとすれば、増幅は弁を半開きの位置で細かく調整する使い方です。みっつ目は「集積回路(IC)」。トランジスタを小さく作ってひとつのチップに集めたものがICで、その究極がCPUです。最新のスマホのチップには100億個を超えるトランジスタが入っています。今日ブレッドボードで1個だけ動かしたあの部品の超高密度版が、ポケットの中で動いているのです。

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