抵抗器のしくみと使い方 ── 電子工作でいちばん出会う部品
ブレッドボードの上に並ぶ、小さな円筒にカラフルな帯が描かれた部品。これが抵抗器(レジスタ)です。電子工作をしていると、どんな回路にも必ずと言っていいほど登場します。LEDを光らせるときも、ボタンを読むときも、センサーをつなぐときも、たいてい抵抗器が一緒に使われています。地味な存在ですが、これを理解できているかどうかで、回路図の読みやすさが大きく変わります。逆に言えば、抵抗器でつまずく人は、その先のほとんどの回路でつまずいてしまいます。ですからこのコースでは、最初の部品として抵抗器をていねいに見ていきましょう。むずかしく感じても大丈夫、ひとつずつ進めれば必ず分かります。

1. 抵抗器は「電流の流れにくさ」をつくる部品
電気を水の流れにたとえてみましょう。電圧は水を押し出す「水圧」、電流は流れる「水の量」にあたります。では抵抗とは何でしょうか。これは水路の途中にある「細い場所」だと思ってください。管が細ければ、同じ水圧でも流れる水の量は減りますよね。抵抗器は電気の通り道をわざと細くして、流れる電流の量を抑える部品なのです。

この関係を式にしたのが、有名なオームの法則です。
V = I × R (電圧 V〔ボルト〕= 電流 I〔アンペア〕× 抵抗 R〔オーム〕)
この式は、知りたいものに合わせて3つの形に変形できます。電子工作ではこの3つをいつも使いますので、ぜひ手になじませてください。
V = I R I = V/R R = V/I
たとえば3Vの電源に100Ωの抵抗をつなぐと、流れる電流は次のように求まります。
I = V/R = 3/100 = 0.03 A = 30 mA
抵抗を大きくすれば電流は小さくなり、抵抗を小さくすれば電流は大きくなります。この「電流を自分の思った値に抑えられる」という性質こそが、抵抗器がどこでも使われる理由です。
抵抗器は電気を熱に変えています
抑えられた電気のエネルギーは、どこへ行くのでしょうか。答えは「熱」です。抵抗器は電流を妨げるとき、そのぶんのエネルギーを熱として放出します。発生する電力(熱の量)は次の式で表されます。こちらも、分かっている値に合わせて3つの形で書けます。
P = V I = I² R = V²/R (電力 P〔ワット〕)
たとえば100Ωに30mA(0.03A)が流れているときの発熱は、
P = I² R = (0.03)² × 100 = 0.0009 × 100 = 0.09 W
となります。この発熱の計算は、あとの「注意点」でとても大切になります。抵抗器が焼けて壊れるか、無事でいられるかが、この値で決まるからです。いまは「抵抗器は電流を抑えるかわりに、少し熱くなる部品」だと覚えておきましょう。
2. 値の読み方 ── カラーコードと回路記号
抵抗器の本体には数字が書かれていません。代わりに色の帯(カラーコード)で抵抗値を表します。最初は暗号のように見えますが、ルールはとてもシンプルです。よく使われる4本帯タイプでは、左から「1けた目・2けた目・10の何乗か(乗数)・許容差」を表します。
| 色 | 数字 | 乗数 |
|---|---|---|
| 黒 | 0 | ×1 |
| 茶 | 1 | ×10 |
| 赤 | 2 | ×100 |
| 橙(だいだい) | 3 | ×1k |
| 黄 | 4 | ×10k |
| 緑 | 5 | ×100k |
| 青 | 6 | ×1M |
| 紫 | 7 | ×10M |
| 灰 | 8 | — |
| 白 | 9 | — |
たとえば「茶・黒・赤」と並んでいれば、1(茶)・0(黒)・×100(赤)なので、計算すると次のようになります。
10 × 100 = 1000 Ω = 1 kΩ
電子工作で最も出番が多い「茶・黒・赤・金」は、まさにこの1kΩ(金は許容差±5%)です。LED用によく使う「赤・赤・茶(220Ω)」や「茶・黒・橙(10kΩ)」あたりも、見ただけで分かるようになると作業が速くなります。覚えるのが大変なら、最初はテスターで測ってしまって大丈夫です(測り方はあとで紹介します)。
回路図の上では、抵抗器は長方形の記号(新JIS)か、ギザギザの記号(旧記号・海外では今も多いです)で描かれます。横に「R1」「220Ω」などと値が添えられます。どちらの記号も同じ抵抗器を指していると知っておけば、海外のサイトの回路図を見ても迷いません。

3. 基本の使い方は「電流制限」と「分圧」
抵抗器の使い道はたくさんありますが、はじめに出会うのは次の2つのパターンです。
使い方その1:電流を制限する(LEDを守る)
LEDは、そのまま電源につなぐと一瞬で壊れてしまう部品です(理由は次の記事でくわしく扱います)。そこで、LEDと直列に抵抗器を入れて、電流を安全な量に抑えます。これを電流制限といいます。考え方を一般の式にすると、こうなります。
R = (電源電圧 − LEDの電圧)/ 流したい電流
たとえば電源5V、LEDにかかる電圧(順方向電圧)が約2V、流したい電流を10mAにしたいとしましょう。抵抗器が引き受けるべき電圧は 5 − 2 = 3V ですから、
R = (5 − 2)/0.01 = 3/0.01 = 300 Ω
となります。手元に300Ωがなければ、少し大きい330Ωを使えば大丈夫です(電流が少し減って、より安全側になります)。このとき抵抗器で発生する熱も確かめておきましょう。
P = V I = 3 × 0.01 = 0.03 W
1/4W(0.25W)の抵抗器なら余裕で大丈夫ですね。この「電源電圧から部品の電圧を引いて、流したい電流で割る」という流れは、電子工作のあらゆる場面で使う基本中の基本です。
使い方その2:電圧を分ける(分圧)
抵抗器を2本直列につなぐと、電源電圧をその比率で分け合います。これを分圧といいます。2本の抵抗を R1、R2 として、つなぎ目(中点)から取り出せる電圧 Vout は、次の式で計算できます。
Vout = Vin × R2 /(R1 + R2)
たとえば Vin = 5V で、R1 = R2 = 10kΩ のように同じ値を2本使うと、
Vout = 5 × 10/(10 + 10) = 5 × 0.5 = 2.5 V
となり、ちょうど半分の電圧が取り出せます。R2 を大きくすれば Vout は大きく、小さくすれば Vout は小さくなります。可変抵抗(ボリューム)やセンサーの値を読むときに、この分圧の式がそのまま効いてきます。今は「抵抗を直列にすると、つなぎ目から好きな電圧を取り出せる」と押さえておけば十分です。

4. ここに注意 ── よくある失敗
抵抗器は丈夫な部品ですが、使い方をまちがえると焼けたり、回路がうまく動かなかったりします。つまずきやすいポイントを知っておきましょう。先に知っておけば、こわがる必要はありません。
(1) 定格電力(ワット数)を超えると焼けます
抵抗器には「何ワットまでの熱に耐えられるか」という定格電力があります。よく売られている小型のものは1/4W(0.25W)です。さきほどの発熱の式 P = I² R で計算した値が、この定格を超えると、抵抗器は熱で焦げ、最悪は燃えてしまいます。たとえば100Ωに0.1A(100mA)流すと、
P = I² R = (0.1)² × 100 = 0.01 × 100 = 1 W
となり、1/4Wの抵抗では4倍オーバーで、確実に焼けます。設計するときは「この抵抗で何ワット発生するか」を必ず一度は計算する習慣をつけましょう。心配なら1/2Wや1Wの大きめの抵抗を選べば安心です。

(2) 抵抗ゼロ(直結)は禁止です
「抵抗を入れ忘れてLEDを直接つないだ」「電源のプラスとマイナスを抵抗なしでつないだ」——これらはショート(短絡)です。R が限りなくゼロに近づくと、I = V/R の式から電流 I は一気に大きくなり、部品や電池、配線を壊してしまいます。電源にとって抵抗ゼロは「全力で水を流せ」という命令と同じです。抵抗器は、その全力を安全な量に抑える「ブレーキ」だと考えてください。
(3) カラーコードの読みまちがい
帯の向きを逆から読むと、まったく違う値になります。許容差の帯(金・銀)がある側を右にして読むのが基本です。また橙(だいだい)と赤、茶と紫は照明によって見分けにくいことがあります。少しでも不安なら、思い込みで挿さずにテスターで測りましょう。これがいちばん確実です。
(4) 許容差を忘れずに
抵抗値はぴったりその値ではなく、±5%や±1%といった誤差(許容差)を持っています。1kΩ ±5%なら、実物は950〜1050Ωのどこかにあります。LEDの電流制限くらいなら誤差は気になりませんが、精密な分圧やセンサー回路では±1%(金属皮膜)を選ぶとよいでしょう。
5. 確かめてみよう ── テスターで測る
理屈を読んだら、実物で確かめるのが理解への近道です。デジタルテスターのダイヤルを「Ω(抵抗)」に合わせ、抵抗器の両足にプローブ(赤・黒)を当ててみてください。抵抗器には極性がないので、赤と黒はどちらをどちらに当てても大丈夫です。表示された値を、カラーコードから読んだ値と見くらべてみましょう。許容差の範囲で、だいたい一致するはずです。

ひとつだけ注意です。抵抗を測るときは、必ず回路から外して単体で測ってください。回路につないだまま測ると、まわりの部品を通ってしまい、正しい値が出ません。最初はバラの抵抗器を何本か測って、カラーコードと数字の対応に慣れていきましょう。
6. まとめと次のステップ
抵抗器は「電流の流れにくさをつくる部品」で、オームの法則 V = I R がそのすべての土台でした。値はカラーコードで読み、使い方の基本は「電流制限(R = (電源 − 部品の電圧)/電流)」と「分圧(Vout = Vin × R2/(R1+R2))」。そして最大の注意点は、発熱(P = I² R)が定格電力を超えないことと、抵抗ゼロのショートを避けることでした。この2つの安全感覚さえ身につければ、抵抗器でこわい思いをすることはほとんどありません。
次の記事では、その抵抗器とセットで必ず使う「LED」を扱います。なぜLEDは抵抗なしでつなぐと壊れるのか、順方向電圧Vfとは何か、極性をどう見分けるか——抵抗器の電流制限の話が、そのまま生きてきます。
発展・応用アイデア
もっと深めたい人へ、3つの寄り道を置いておきます。ひとつ目は「合成抵抗」です。手元に欲しい値がなくても、2本を組み合わせれば作れます。直列なら R = R1 + R2、並列なら 1/R = 1/R1 + 1/R2 で計算できます。たとえば10kΩを2本並列にすると5kΩになりますね。ふたつ目は「E系列」です。抵抗器の値は1kや2kのようなキリのいい数字ではなく、220や330、470といった半端な値が標準になっています。これはE12・E24という決められた数列で、許容差を考えた合理的な理由があります。みっつ目は「チップ抵抗」です。スマホや基板の中で使われている、米粒よりも小さい抵抗器で、カラーコードではなく数字(103 = 10 × 10³ = 10kΩ など)で値を表します。どれも、次に部品箱を開けたときの楽しみが増えるはずです。