電子工作のきほん|#13 はんだ付け

はんだ付け ── 回路を「作品」にする最後の技術

いよいよ最終回です。ここまでの回路はぜんぶブレッドボードの上で組んできました。#03で話したとおり、ブレッドボードは差すだけ・抜くだけで何度でも試せる、実験のための道具です。ただし弱点もあります。持ち上げて振れば線が抜けるし、何か月もたつと接触が悪くなることもあります。作って終わりの実験ならそれでいいのですが、「机のすみでずっと光らせておきたい」「ロボットに載せて動かしたい」となったら、部品どうしをしっかり固定する必要があります。その方法がはんだ付けです。今回は道具の選び方から、きれいに付けるコツ、失敗の見分け方までを一気に学んで、シリーズの仕上げにLEDライトを作品として完成させます。

電子工作のきほん #13 はんだ付け(アイキャッチ)

1. はんだ付けってなに ── 金属を「混ぜて」つなぐ

はんだ付けは、よく「金属用ののり付け」と説明されますが、実は接着とは仕組みがちがいます。はんだは、スズを主成分とする合金(金属を混ぜ合わせたもの)です。現在の主流は鉛を含まない鉛フリーはんだで、スズに少量の銀と銅を混ぜたもの。融点はおよそ217℃で、銅(融点1085℃)よりはるかに低い温度でとけます。この「相手の金属はとけないが、はんだだけがとける」温度差を利用するのがはんだ付けです。

はんだ付けはのり付けではない(とけたはんだが銅の表面と混ざり合い、うすい合金の層を作って一体化する断面図)

とけたはんだは、銅の表面にふれると、その場で銅の原子と混ざり合って、境目にうすい合金の層を作ります。図の拡大部分がそれです。のりのように表面にくっついているのではなく、境目では2つの金属が混ざって一体化している。だから正しく付いたはんだは、引っぱったくらいではびくともしません。電気的にも、金属どうしが連続しているので、接触不良とは無縁のしっかりした通り道になります。

もうひとつ、かげの主役がフラックスです。糸はんだの断面を見ると、中心にヤニ(松やにの仲間)が入っています。金属の表面は、空気にふれているだけで酸化膜といううすい膜におおわれていて、このままでははんだがはじかれてしまいます。フラックスは熱で先にとけ出して酸化膜を取りのぞき、はんだが銅になじむ道を作ります。はんだ付けのときに出る白い煙は、このフラックスが蒸発したものです。

2. 道具をそろえよう

最初にそろえる道具は4つだけです。

はんだ付けの道具(はんだごて・こて台・糸はんだ・はんだ吸い取り線)

はんだごては、こて先を加熱してはんだをとかす道具です。選ぶときのおすすめは温度調節機能つきのもの。鉛フリーはんだは融点が高めなので、こて先を350℃前後に設定して使います。調節機能のない安いこてでも作業はできますが、温度が上がりすぎて部品やこて先を傷めやすいので、長く使うなら調節式が結局お得です。こて台は、熱いこてを安全に置くための台で、こて先をぬぐうスポンジ(または金属たわし)がついています。はんだごてとこて台は必ずセットで使ってください。糸はんだは直径0.8mm前後が電子工作には使いやすい太さです。そしてはんだ吸い取り線。銅の細い線を編んだテープで、失敗したはんだの上に当ててこてで温めると、毛細管現象ではんだを吸い取ってくれます。やり直しがきくと分かっていれば、初めてのはんだ付けもこわくありません。

3. 使い方 ── 基本の4ステップ

はんだ付けの手順は、たった4つです。ただし順番が命です。

はんだ付けの4ステップ(こて先を当てて温める→はんだを送る→はんだを先に離す→こてを離して動かさず冷ます)

ステップ1、こて先を当てて温める。こて先を、ランド(基板の銅の面)と部品のリード線の両方に同時にふれさせて、1〜2秒待ちます。はんだ付けの失敗の大半は、この「温め」を飛ばすことから始まります。ステップ2、はんだを送る。温まった接合部に、こての反対側から糸はんだを差し入れます。十分温まっていれば、はんだはこてではなく部品の熱でとけて、ランドの上に薄く広がります。こて先にはんだを当ててとかすのではなく、温まった部品側ではんだをとかす——ここがいちばん大事なコツです。ステップ3、はんだを先に離す。適量が流れたら、糸はんだのほうを先に引きあげます。ステップ4、こてを離して冷ます。こてを引きあげたら、はんだが固まるまでの数秒間、部品を動かさないこと。固まる途中で動かすと、内部にひびが入って接触不良のもとになります。

文章にすると長いですが、1か所あたりの作業時間は3〜4秒です。「温めてから送る。はんだ、こての順に離す」。この呪文だけ覚えて、あとは手を動かして体で覚えてください。

4. ここに注意 ── 安全と、よくある失敗

(1) やけどと換気 ── 作業環境を先に整える

こて先は350℃。うっかりさわれば一瞬でやけどします。使わない瞬間は必ずこて台に置く、電源を抜いたあともしばらくは熱いままだと知っておく、机には耐熱マットや木の板を敷く。この3つは作業を始める前のお約束です。また、フラックスの煙は吸いこまないに越したことはありません。窓を開けるか換気扇を回し、顔を接合部の真上に持っていかないようにしましょう。

(2) 仕上がりを見分ける ── 目ざすは富士山形

仕上がりの見分け方(富士山形が成功・イモはんだ/ブリッジ/ツノは失敗)

良いはんだ付けは、すそ野がなだらかに広がった富士山形になり、表面につやがあります。対して、丸い団子のまま盛り上がっているのがイモはんだ。温め不足ではんだがランドになじんでおらず、見た目はつながっていても電気的には接触不良、ということがよくあります。となりのランドとはんだがつながってしまったのがブリッジで、これはショートそのものなので必ず直します。はんだが角のようにとがって固まったのがツノで、こてを離すタイミングが早いときにできます。どれも直し方は同じです。吸い取り線で古いはんだを取りのぞいて、もう一度4ステップをやり直すだけ。失敗は何度でも巻き戻せます。

(3) 部品を熱でこわさない

はんだ付けの熱は、リード線を伝って部品本体にも流れこみます。LED・トランジスタ・ICといった半導体は熱に弱く、こてを当てすぎると外見はそのままで中身だけこわれます。1か所につき3秒以内を目安にして、うまくいかなかったら、ねばらずにいったん離して部品を冷ましてから再挑戦してください。また、同じ場所を何度も加熱すると、基板のランドそのものがはがれることがあります。こちらは部品とちがって取り返しがつきにくいので、「迷ったら休ませる」を合言葉にしましょう。

5. 確かめてみよう ── LEDライトを作品にする

それでは総仕上げです。#05で学んだLEDの回路を、ユニバーサル基板(穴とランドだけが並んだ自由配線用の基板)にはんだ付けして、電池で光るLEDライトを完成させます。使う部品は、電池ボックス(単3×2)、100Ωの抵抗器、赤色LEDの3つだけです。

はんだ付けで作るLEDライトの回路図(電池3V→100Ω→赤色LED。流れる電流は1V÷100Ω=10mA)

回路の考え方は#05の復習です。赤色LEDの順方向電圧は約2Vなので、抵抗にかかる電圧は 3−2=1V。流れる電流は I=1÷100=10mA で、LEDは安全にしっかり光ります。組み立ての手順はこうです。まず抵抗器とLEDの足を基板の穴に差し、裏側で足を少しだけ外に曲げて、ひっくり返しても落ちないように仮止めします。次に裏側のランドと足を4ステップではんだ付けし、余った足をニッパーで切ります。部品どうしをつなぐ区間は、切り落とした足を再利用して配線すると経済的です。最後に電池ボックスの線をはんだ付けします。LEDの向き(足の長いほうが+側)だけは、はんだ付けの前にもう一度確認してください。

完成したら、電池を入れる前にテスターの出番です。導通モードにして、電池ボックスにつながる+と−の線の間に当ててみます。ここでブザーが鳴ったら、どこかがブリッジしているサインなので、鳴った原因を探して直します。鳴らないことを確認してから電池を入れて、LEDが点灯すれば完成です。ブレッドボードの試作とちがって、振っても逆さにしても回路は外れません。それがはんだ付けの力です。

6. まとめ ── シリーズを終えて

はんだ付けは、とけたはんだが銅と合金の層を作って一体化する接合です。手順は「温めてから送る。はんだ、こての順に離す」の4ステップで、目ざす仕上がりは富士山形。失敗しても吸い取り線で何度でもやり直せます。

そしてこれで、「電子工作のきほん」全14回はおしまいです。#01の水の流れのたとえから始まって、オームの法則で電流を計算し、抵抗・LED・スイッチ・コンデンサ・ダイオード・トランジスタ・MOSFETと部品を一つずつ学び、電源とGNDで回路全体を見わたし、最後にはんだ付けで作品に仕上げる——電子工作の土台は、もうひととおりそろいました。ここから先は、マイコンを使って回路を「プログラムで動かす」世界が待っています。当サイトのPico電子工作のコースに進めば、今回までの知識がそのまま生きてきます。それでは、よいものづくりを。

発展・応用アイデア

もっと知りたい人へ、3つの寄り道です。1つ目は「表面実装とリフロー」。スマホの中の基板には、足のない米粒より小さな部品がびっしり並んでいます。あれは表面実装部品(SMD)といって、クリーム状のはんだを印刷した基板に部品を載せ、オーブンのような炉で一気に加熱して付けます(リフローといいます)。工場では1枚の基板の何百か所が同時にはんだ付けされているのです。2つ目は「こて先のメンテナンス」。こて先は使ううちに酸化して、はんだをはじく黒い面ができます。スポンジでこまめにぬぐい、作業の終わりに新しいはんだを薄くのせてコーティングしておくと、こて先は長持ちします。3つ目は「リワークの道具」。吸い取り線のほかにも、ポンプではんだを吸い出すはんだ吸い取り器や、熱風で部品ごと外すホットエアーなど、修理(リワーク)専用の道具があります。ジャンク品の基板から部品を外して再利用するのも、電子工作の楽しみのひとつです。

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