電子工作のきほん|#12 電源とグランド

電源とグランド ── 回路全体の土台

この講座では、当たり前のように「電池ボックス(単3×2=3V)」を使ってきました。今回は、そうやって脇役のままにしてきた電源そのものと、これまで記号だけ登場してきたGND(グランド)を主役にします。電子工作の調子が悪いとき、原因をたどると半分くらいは電源まわりに行き着きます。LEDが暗い、動いたり動かなかったりする、さわると直る——そういう不思議な症状の正体は、たいてい電圧の不足か、GNDのつなぎ忘れです。部品は#11までで出そろっているので、今回新しく買うものはありません。考え方を仕上げる回です。

電子工作のきほん #12 電源とグランド(アイキャッチ)

1. GNDってなに ── 電圧の基準点

#01で、電圧は「2点のあいだの差」だと学びました。水位の差と同じで、1点だけ見ても電圧は決まりません。これは山の高さと同じ理屈です。「富士山は3776m」と言えるのは、海面を0mと決めてあるからで、もし基準を山頂に取れば海面は−3776mになります。基準をどこに置くかで数字は変わりますが、2点の差は変わりません。

GNDは電圧の基準点(同じ回路でも、いちばん下を基準にすると3V・1.5V・0V、真ん中を基準にすると+1.5V・0V・−1.5Vになる)

回路でもまったく同じことをします。回路のどこか1点を「ここを0Vにする」と決めて、すべての電圧をそこからの差で言い表します。この基準点がGNDです。名前は英語のground(地面)から来ていて、昔の電信や無線が大地そのものを電気の帰り道に使っていたなごりです。図を見てください。同じ直列回路でも、いちばん下を基準にすれば各点は3V・1.5V・0V、真ん中を基準にすれば+1.5V・0V・−1.5V。数字は変わりますが、回路の動きは何ひとつ変わりません。ふつうは電池の−側をGNDに選びます。

GNDを決めると、もうひとつ良いことがあります。回路図が読みやすくなるのです。複雑な回路図では、あちこちに小さなGND記号(横線を3本重ねた印)が描かれています。あれは「この線は基準につながっています」という約束の印で、図の中のGND記号はすべて1本につながっているとみなします。電気の帰り道をいちいち線で引き回さなくてよくなるので、線の本数が減って、図の本筋が見えやすくなります。#11までの回路図が1つの輪っかで描けたのは回路が小さかったからで、これから先、回路図を読むときはGND記号が帰り道だと思ってください。

2. 電源のいろいろ ── 電圧と、流せる電流

電源の仕事は、#01の水のたとえで言えばポンプです。水位の差(電圧)を作り続けて、電流を押し出します。電子工作でよく使う電源は3つあります。

電源のいろいろ(乾電池は1本1.5Vで直列にすると足し算・USBは5V・ACアダプタはラベルの電圧と電流を確認)

1つ目は乾電池です。アルカリ乾電池は1本1.5Vで、直列につなぐと電圧は足し算になります。単3×2の電池ボックスが3Vなのは 1.5V+1.5V=3V だからです。なお、くり返し使えるニッケル水素充電池は1本1.2Vなので、2本で2.4V。同じ電池ボックスでも電圧が少し低くなることは覚えておいてください。2つ目はUSBです。スマホの充電器やモバイルバッテリーのUSB端子からは、いつでも5Vが取り出せます。手に入りやすく電圧も安定しているので、電子工作の電源としても定番です。3つ目はACアダプタ。コンセントの交流100Vを、機器に合わせた直流に変換する箱です。種類が多いのが特徴で、本体のラベルに必ず「OUTPUT 9V 1A」のような表示があります。

ここで大事なのは、どの電源にも「電圧」と「流せる電流の上限」の2つの顔があることです。OUTPUT 9V 1Aなら、9Vの電圧で、最大1Aまで流せるという意味です。上限を超える電流を引き出そうとすると、電圧が下がったり、電源が熱くなったり、保護回路が働いて止まったりします。電源を選ぶときは、回路が欲しがる電圧と電流の両方を確認する——これが鉄則です。

3. 使い方 ── GNDを制する者は回路を制す

電源とGNDの使い方には、3つの作法があります。

1つ目は、配線を電源から始めることです。ブレッドボードで回路を組むときは、まず電池の+を+レールへ、−を−レールへつなぎます(#03でやった、あの最初の2本です)。+レールと−レールは回路全体に電気を配る幹線道路で、−レールがそのままGNDになります。部品の配線は、この幹線道路から枝を伸ばすように進めると、間違いが起きにくくなります。

別の電源どうしはGNDをつないでから(GNDをつながないと0Vの基準がバラバラで信号の電圧が決まらない・つなぐと基準がそろって正しく伝わる)

2つ目は、電源が2つ以上あるときの作法です。たとえば、電池で動く回路とUSBで動く回路のあいだで信号をやりとりしたいとします。このとき、信号線だけをつないでも正しく動きません。信号の電圧は「その回路のGNDからの差」なので、おたがいのGNDがつながっていないと、相手の0Vがどこなのか分からず、信号の高い低いが決められないのです。図のように、先にGNDどうしをつないで基準をそろえてから、信号線をつなぎます。「回路をまたぐときは、まずGNDを共通にする」と覚えてください。

3つ目は、電源を安定させるコンデンサです。#07で、コンデンサは「ためて・はなして」電圧の揺れをならす部品だと学びました。モーターやICが急に電流を欲しがると、電源の電圧は一瞬へこみます。そこで、電気を食う部品のそばに電解コンデンサ(100µF〜1000µF程度)を電源とGNDのあいだに入れておくと、コンデンサが小さな貯水タンクとして働いて、へこみを埋めてくれます。この使い方のコンデンサをパスコン(バイパスコンデンサ)と呼びます。完成品の電子基板を見ると、ICのそばに必ず小さなコンデンサが置かれているのはこのためです。

4. ここに注意 ── 電源まわりの3大事故

電源まわりの失敗は被害が大きくなりがちです。3つだけ、必ず守ってください。

(1) +と−を逆につながない

電池を逆向きに入れる、ACアダプタのプラグの極性を確かめない——逆接続は、部品をこわす事故の代表です。LEDやダイオードは向きが逆だと動かないだけで済むことが多いのですが、ICや電解コンデンサは逆の電圧がかかると内部がこわれ、電解コンデンサは破裂することさえあります。電池ボックスに電池を入れるときは+−の刻印を確認する。配線をやり直したら、電源を入れる前に赤と黒の行き先をもう一度目で追う。この一手間で逆接続の事故はほぼ防げます。

電源まわりの注意(+−を逆に入れない・モーターが動いた瞬間の電圧の落ち込みに注意)

(2) 電圧の落ち込みに注意

右の図のグラフを見てください。モーターのような大食いの部品が動き出した瞬間、電源の電圧は一時的に大きく落ち込みます。このとき同じ電源につながっている他の部品は、電圧不足で誤動作することがあります。LEDがちらつく、回路が勝手にリセットされる、といった症状の多くはこれが原因です。対策は、モーターと他の回路で電池を分ける(その場合もGNDは共通にします)、パスコンを足す、へたった電池を新品に替える、の3つです。

(3) +とGNDを直結しない

いちばん危険なのがショートです。+レールと−レールを部品なしの導線でつないでしまうと、#02で学んだとおり、電流をはばむものが何もない道に大電流が流れ、電線や電池が発熱します。ブレッドボードのレールにジャンパ線を差すときは、行き先のレールを差し間違えていないか、差す前に一呼吸おいて確かめてください。

5. 確かめてみよう ── 電池の内部抵抗を体感する

最後に、テスターで電源の「正体」を1つあばきましょう。実は電池は、純粋な電圧源ではありません。図のように、電圧を生み出す本体(起電力Eといいます)と、小さな抵抗rが直列になったものとして振る舞います。このrを内部抵抗と呼びます。

電池の中には見えない抵抗がある(スイッチを入れる前は表示3.2V・入れると内部抵抗の分だけ下がって2.6V)

内部抵抗があると、何が起きるか。電流Iを流すと、rの両端でI×rの電圧が食われるので、外から見える端子の電圧は V=E−I×r に下がります。電流を流していないときはI=0なのでV=Eのまま。つまり、電池の電圧は「どれだけ電流を流しているか」で変わるのです。

モーターをつなぐと電圧はどうなる?(テスターで+−レール間を測りながら金色の線を抜き差しする実体配線図)

これを実際に見てみます。使うのは電池ボックス(単3×2)、モーター(FA-130)、テスターだけ。図のように電池をレールへつなぎ、テスターをDCVにして赤を+レール、黒を−レールに当てます。モーターは+レールから列21へ差す金色の線で、つないだり外したりできるようにしておきます。

金色の線を抜いた状態では、テスターは電池の起電力そのもの——手元の新しめのアルカリで約3.2Vを表示します。線を差してモーターが回り出すと、表示は2.6V前後まで下がります(数字は電池の新しさで変わります)。これが内部抵抗のしわざです。#11で見たとおりFA-130は2A近い電流を食べるので、内部抵抗を逆算できます。r=(E−V)÷I=(3.2−2.6)÷2=0.3Ω。単3電池1本あたり0.15Ωほどの、目には見えない小さな抵抗が、確かに電池の中にあるのです。さきほど(2)で見た「電圧の落ち込み」の正体も、この内部抵抗です。

6. まとめと次のステップ

電圧はいつでも基準からの差で、その基準がGNDです。GNDを決めれば回路図はすっきり読め、回路をまたぐときはまずGNDを共通にする。電源には電圧と流せる電流の2つの顔があり、上限を超えれば電圧は落ち込む。そして電池の中には内部抵抗が隠れている。部品そのものの話ではないぶん地味ですが、ここが分かっていると、回路の不調を「なんとなく」ではなく理屈で追えるようになります。

次回はいよいよ最終回、はんだ付けです。ブレッドボードの上の試作を、振っても落ちない、ずっと使える作品に変える技術。道具の選び方から、きれいなはんだ付けのコツ、よくある失敗の見分け方までを扱います。

発展・応用アイデア

もっと知りたい人へ、3つの寄り道です。1つ目は「三端子レギュレータ」。USBの5Vから3.3Vを作るなど、高い電圧から決まった低い電圧を作る3本足のICで、AMS1117や7805という型番が定番です。マイコン工作を始めると必ずお世話になります。2つ目は「リニア電源とスイッチング電源」。三端子レギュレータのように余分な電圧を熱として捨てる方式がリニア、スイッチを高速で入り切りして電圧を作る方式がスイッチングです。ACアダプタやスマホ充電器の中身はほぼスイッチング式で、効率が高く小型化できるのが強みです。3つ目は「リチウムイオン電池と保護回路」。モバイルバッテリーの中身であるリチウムイオン電池は、軽くて大容量の代わりに、過充電や過放電でこわれやすい繊細な電池です。そのため必ず保護回路(BMS)とセットで使われています。市販のモバイルバッテリーを分解するのは危険なのでやめておきましょう、と言える理由がここにあります。

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