電子工作のきほん|#09 ダイオードのしくみと使い方

ダイオードのしくみと使い方 ── 電気を一方通行にする部品

これまで扱ってきた抵抗器やコンデンサは、どちら向きにつないでも同じように働く部品でした(電解コンデンサの極性は別として)。今回のダイオードは正反対です。一方の向きには電流を通し、逆の向きにはまったく通さない。道路でいえば一方通行の標識、水道でいえば逆流防止弁にあたります。電気の流れに「向き」を作れるこの部品は、電池の逆接続から回路を守る門番であり、コンセントの交流を直流に変える主役でもあります。じつは#05のLEDもダイオードの仲間です。

電子工作のきほん #09 ダイオードのしくみと使い方(アイキャッチ)

1. ダイオードのしくみ ── 三角の矢印が向きを教えてくれる

もっともよく見かけるダイオードは、黒い小さな円筒の両側から銀色の足が出た形をしています。よく見ると、片方のはしに銀色の帯が1本印刷されています。この帯が向きの目印です。

ダイオードの見た目と回路記号(銀の帯=記号の棒=カソード。順方向は電流が流れ、逆方向は流れない)

ダイオードの2本の足には名前がついています。電流が入っていく側がアノード(A)、出ていく側がカソード(K)。銀の帯があるのはカソード側です。回路記号は三角と棒の組み合わせで、三角のとがった先に棒が立っています。この棒が実物の銀の帯に対応します。「銀の帯=記号の棒=カソード」とひとまとめに覚えてしまいましょう。

そして記号の三角は、ただの飾りではありません。電流が流れる向きを指す矢印になっています。アノードからカソードへ、つまり三角の向きに流れようとする電流は通れます。これを順方向といいます。逆に、カソードからアノードへ流れようとする電流は、棒にせき止められて通れません。これが逆方向です。記号を見れば動きが分かる、よくできたデザインです。

なぜ一方通行になるのか。ダイオードの中身は半導体という材料で、性質の異なる2種類の半導体を貼り合わせた構造をしています。境目には電流の通り方を片側だけにする性質が生まれ、これが一方通行の正体です。半導体のくわしいしくみは#10のトランジスタでもう一歩踏み込みますが、いまは「貼り合わせの境目が弁の役目をする」とイメージできれば十分です。

2. ダイオードの仲間たち ── 整流用・小信号用・LED

ひとくちにダイオードといっても、得意分野ごとにいくつか種類があります。電子工作でよく出会うのは次の3つです。

ダイオードの仲間たち(整流用1N4007・小信号用1N4148・LED。どれも一方通行で記号は三角+棒がもと)

整流用ダイオードは、黒い円筒に銀の帯という、いちばん「ダイオードらしい」見た目のものです。1N4007という型番が定番で、1A程度の大きな電流まで流せるため、電源まわりの逆流防止や交流の整流に使います。小信号用ダイオードは、オレンジ色のガラス管に入った小さなタイプ。定番は1N4148で、流せる電流は小さいかわりに、速い信号の処理が得意です。

そして3つ目がLED。#05でくわしく扱いましたが、正式名称は発光ダイオード(Light Emitting Diode)。名前の通りダイオードの一種で、順方向に電流を流すと光る、という特技を持っています。LEDに向きがあったのは、ダイオードだからこそだったのです。LEDの回路記号が三角+棒に「光が出る」矢印を2本足した形だったことも、ここでつながります。

3. 使い方 ── 守る・そろえる

ダイオードの使いどころは、大きく2つに分けられます。

ひとつ目は回路を守る使い方です。電池ボックスの電池を逆向きに入れてしまったら——マイコンのような繊細な部品は、逆向きの電圧で一発で壊れることがあります。そこで電源の入り口にダイオードを順方向に入れておきます。電池が正しい向きなら電流はそのまま通り、逆向きに入れられたときだけダイオードがせき止めて、回路には何も流れません。たった1本で逆接続事故を防げる、安あがりで頼れる門番です。

ダイオードの向きとLEDの点灯(順方向に入れるとLEDが点き、逆向きに入れると電流が流れず点かない)

ふたつ目は電流の向きをそろえる使い方で、整流といいます。コンセントの電気は交流——向きが1秒間に何十回も入れ替わる電気です。いっぽう電子回路が欲しいのは、向きが一定の直流。そこでダイオードの出番です。一方通行の弁を通せば、行ったり来たりする電流から片方向の分だけを取り出せます。スマホの充電器やACアダプタの中では、ダイオードを4本組み合わせた整流回路が必ず働いています。この話は#12「電源とGND」でもう一度登場します。

4. ここに注意 ── 向き・通行料0.7V・逆耐圧

ダイオードを使うときのつまずきポイントは3つです。

(1) 向きをまちがえない

いちばん多い失敗が逆差しです。ダイオードは見た目が左右対称に近いので、よく見ずに差すと逆向きになります。逆向きでは電流がまったく流れないので、回路は配線が合っているのに「うんともすんとも」言いません。動かないときは、まず銀の帯の向きを確認しましょう。帯のある側(カソード)が、電流の出口——電源のマイナス側に近いほうを向いているのが正解です。

(2) 通りぬけるときに約0.7V取られる

ダイオードは順方向でも、タダで通してくれるわけではありません。通りぬける電流は、約0.7V分の電圧を「通行料」として取られます。これを順方向電圧(VF)といいます。LEDのときに「2Vを引いてから計算する」とやったのと同じで、ダイオードを通る回路では0.7Vを引いてから残りを計算します。0.7Vというと小さく聞こえますが、電池3Vの回路では全体の2割以上。無視すると計算が合わなくなります。

ダイオードの2つのつまずきポイント(銀の帯の向きをまちがえない・順方向電圧約0.7Vを計算に入れる)

(3) 逆方向にも限界がある

「逆方向は流れない」といっても、無限にがんばれるわけではありません。逆向きにかけられる電圧には上限(逆耐圧)があり、超えると弁が決壊して大電流が流れ、壊れます。1N4007の逆耐圧は1000Vもあるので電池工作で心配することはまずありませんが、部品には必ず限界の数値がある——抵抗器の1/4W、コンデンサの耐圧と同じ考え方がここでも出てくる、と覚えておいてください。

5. 確かめてみよう ── 一方通行を実験で見る

それでは、ダイオードの一方通行を目で確かめましょう。使うのは電池ボックス(単3×2=3V)、整流用ダイオード(1N4007)、330Ωの抵抗器、赤色LEDです。電池→ダイオード→抵抗→LEDの順に直列につなぎます。

ダイオードの一方通行をたしかめる実体配線図(電池3V→1N4007→330Ω→LED。銀の帯をLED側に向けると点く)

ダイオードは、銀の帯を列13側——LEDへ向かう側に向けて差します。電流の流れは、+のレールから列9へ、ダイオードを順方向に通りぬけて列13へ、330Ωの抵抗とLEDを通って−のレールへ。この向きならLEDが点きます。

点灯を確認したら、ダイオードだけを抜いて、左右を入れ替えて差し直してみてください。配線は1本も変えていないのに、LEDは点きません。電流の通り道のどこか1か所でも一方通行の向きに逆らうと、回路全体が止まる——ダイオードの働きがそのまま見える実験です。

もうひとつ、順方向のときのLEDの明るさにも注目です。#05で組んだ「電池→330Ω→LED」よりも、すこし暗いことに気づくでしょうか。理由は通行料の0.7Vです。電池の3VからLEDの2Vとダイオードの0.7Vを引くと、330Ωにかかる電圧は残り0.3V。電流は 0.3V ÷ 330Ω ≒ 0.9mA で、#05のときの約3mAの3分の1しかありません。0.7Vの通行料が、明るさの差としてちゃんと見えるのです。

6. まとめと次のステップ

ダイオードは、電流を一方通行にする部品です。銀の帯=記号の棒=カソードで向きを見分け、順方向なら流れ、逆方向なら流れない。通りぬけには約0.7Vの順方向電圧がかかり、逆方向の限界は逆耐圧で決まる。逆接続からの保護と、交流を直流にする整流が代表的な仕事で、#05のLEDも光るダイオードでした。電気の流れに「向き」を作れるようになったことで、回路の設計はひとつ上の段階に進みます。

次の記事では「トランジスタ」を扱います。半導体の貼り合わせをもう1枚増やすと、電流のオン・オフや増幅をあやつれる部品になります。電子回路の世界を支える最重要部品、いよいよ登場です。

発展・応用アイデア

もっと知りたい人へ、3つの寄り道です。ひとつ目は「ツェナーダイオード」。ふつうは壊れる原因の逆方向の決壊を、わざと決まった電圧で起こさせて、一定の電圧を作り出すために使う変わり種です。ふたつ目は「ショットキーバリアダイオード」。通行料が0.2〜0.4Vと安く、すばやく切り替わるタイプで、通行料がもったいない電源回路で重宝されます。みっつ目は「ブリッジ整流回路」。ダイオード4本をひし形に組むと、交流のプラス側もマイナス側も捨てずに直流へ変換できます。手元にダイオードが4本あれば、記号の三角の向きを追いかけて「どちら向きの電流もちゃんと同じ出口に出てくる」ことを紙の上で確かめられます。一方通行の弁を4つ組み合わせるだけでこれができる、というのがダイオードの面白さです。

PAGE TOP