可変抵抗器のしくみと使い方 ── 回して電気を調整する部品
ラジオの音量つまみ、ライトの明るさ調整、ゲーム機のジョイスティック。「回したり動かしたりすると、なめらかに変わる」操作の裏には、ほぼ例外なくこの部品がいます。可変抵抗器——つまみを回すと抵抗の値が変わる抵抗器です。#04で学んだ抵抗器は値が固定でしたが、こちらは0Ωから最大値まで自由自在。今回はその中身をのぞいて、つまみでLEDの明るさを変える実験までやってみましょう。

1. 可変抵抗器のしくみ ── 抵抗体の上を接点がすべる
可変抵抗器の中身は、固定の抵抗器と同じ材料でできています。カーボン(炭素)の帯が馬蹄形に印刷されていて、その両端が足1と足3につながっています。つまり足1と足3の間は、ただの固定抵抗です。B10kと書かれた部品なら、いつ測っても10kΩです。

主役は3本目の足、まんなかの足2です。足2は、軸といっしょに回る「ワイパー」という接点につながっています。ワイパーは抵抗体の上に軽く触れていて、軸を回すとその接触位置がすべっていきます。
抵抗の大きさは電気が通る道のりで決まるのでした(#04)。ワイパーが足1のすぐ近くにいれば、足1〜足2の間の道のりは短いので抵抗はほぼ0Ω。反対の端まで回せば、抵抗体をまるごと通るので10kΩ。途中ならその中間の値になります。つまみを回す=電気の通る道のりを伸び縮みさせる、というわけです。
ひとつ面白い性質があります。足1〜足2の抵抗と足2〜足3の抵抗を足すと、ワイパーがどこにいても、必ず全体の10kΩになります。片方が増えればもう片方が減る。この性質があとで効いてきます。
2. 種類と見分け方 ── 回転型・半固定・スライド式
動かし方のちがいで、よく見かけるのは3種類です。

回転型は、軸につまみを付けて指で回すタイプです。音量つまみとして一番なじみがあるので、ボリュームという呼び名でも通じます。半固定(トリマー)は、ドライバで回す小さなタイプ。頻繁に動かすためではなく、基板の上で一度ちょうどよい値に合わせたら、あとは固定しておく用途です。スライド式は、レバーを直線的に動かすタイプ。音楽スタジオのミキサーに並んでいるフェーダーがこれです。
本体には「B10k」のような記号が書かれています。10kは最大値が10kΩという意味。頭のBはカーブの種類で、回した角度に比例して抵抗が変わる素直なタイプを表します。Aと書かれていたら音量調整用のカーブ(はじめはゆっくり、あとから大きく変わる)です。人間の耳の感じ方に合わせた特性で、音響機器ではAが好まれますが、電子工作で使うのはふつうBカーブです。
3. 使い方 ── 2本足で「可変抵抗」、3本足で「分圧」
使い方は大きく2通りあります。
ひとつ目は、まんなかの足(足2)と、どちらか片はしの足の、2本だけを使う方法です。この2本の間は「つまみで値が変わる抵抗器」そのものなので、固定抵抗の代わりに回路へ入れれば、電流をつまみで加減できます。LEDの明るさ調整がまさにこれで、あとの実験で試します。
ふたつ目が、3本ぜんぶを使う分圧(ぶんあつ)です。足1と足3に電池をつなぐと、抵抗体の両端に3Vがかかります。このときワイパー(足2)の電圧はどうなるでしょうか。

電圧は、抵抗の大きさに比例して分け合われるのでした(#02の直列回路)。ワイパーから下の部分の抵抗をR2、全体をRとすると、取り出せる電圧は次の式になります。
Vout = 3V ×(R2 ÷ R)
ワイパーが一番下ならR2=0で Vout=0V。一番上ならR2=Rで Vout=3V。まんなかなら1.5Vです。つまみを回すだけで、0Vから3Vまでの好きな電圧を連続して取り出せる——これが分圧です。
この使い方が本領を発揮するのは、マイコンと組み合わせたときです。マイコンには電圧を数値として読み取る機能(ADC)があり、ワイパーの電圧を読めば「つまみがいまどの位置にあるか」が分かります。ゲーム機のジョイスティックの正体は、縦方向と横方向に1個ずつ仕込まれた可変抵抗器です。
4. ここに注意 ── 0Ω・電力・ガリ
可変抵抗器で失敗しやすいポイントは3つあります。
(1) 端まで回すと0Ωになる
2本足使いのとき、つまみを端まで回すと抵抗は0Ωになります。回路に他の抵抗がないと、電流を抑えるものが何もなくなり、LEDや電池に大電流が流れて壊れます。可変抵抗器だけに電流制限を任せず、直列に保護抵抗(LEDなら330Ωなど)を必ず入れておきます。こうすれば、つまみをどこまで回しても電流は安全な範囲に収まります。
(2) 大きな電流は流せない
可変抵抗器が熱として逃がせる電力は、小さなものでは0.1W程度しかありません。#04でやった計算と同じく、P=V×Iで見積もって超えないように使います。「モーターの速さもつまみで変えたい」と思っても、直接つなぐのは禁物です。モーターの電流は桁違いに大きく、すぐに焼けてしまいます。大きな電流の調整は、#10で学ぶトランジスタに任せ、可変抵抗器はその指示役にまわすのが正しい分担です。
(3) 古くなると「ガリ」が出る
ワイパーは抵抗体の上をこすって動く構造なので、長年使うと接触面が汚れたりすり減ったりします。すると回したときに音や明るさがガリガリと乱れる——通称「ガリ」です。古いラジオの音量つまみを回したときのあの雑音がそれです。機械的にこすれる部品には寿命がある、と覚えておきましょう。

5. 確かめてみよう ── つまみでLEDの明るさを変える
それでは、つまみで明るさが変わる回路を組んでみましょう。使うのは電池ボックス(単3×2=3V)、可変抵抗器(B10k)、330Ωの抵抗器、赤色LEDです。可変抵抗器は2本足使いで、まんなかの足と片はしの足だけを回路に入れます。

ブレッドボードに差した可変抵抗器の足は、まんなかが列13、右はしが列14に入っています。+のレールから赤いジャンパー線で列14(右の足)へつなぎ、まんなかの足の列13から330Ωの抵抗、LEDへと続けます。LEDの向き(長い足が+側)は#05の通りです。
組めたら、つまみをゆっくり回してみてください。LEDの明るさが、スイッチのオン・オフとはまったく違う、なめらかな変わり方をするはずです。つまみを0Ω側いっぱいに回しても、保護抵抗の330Ωがあるので壊れる心配はありません。
反対側いっぱい(10kΩ)まで回すと、LEDはほぼ消えてしまいます。理由は計算で分かります。LEDにかかる2Vを除いた残り1Vを、10kΩ+330Ωで分け合うので、電流は約0.1mA。LEDがはっきり光るには数mAほしいので、目に見えないほど暗くなるのです。#04と#05で学んだ計算が、つまみ1個の動きの中にぜんぶ入っています。
6. まとめと次のステップ
可変抵抗器は、抵抗体の上をワイパーがすべることで抵抗の値を変えられる部品です。2本足で使えば「つまみで変わる抵抗器」、3本足で使えば「好きな電圧を取り出す分圧器」。端まで回すと0Ωになるので保護抵抗を忘れずに、大きな電流はトランジスタに任せる。この3点を押さえれば、回路に「人の手で調整できるところ」を作れるようになります。
次の記事では「ダイオード」を扱います。電気を一方通行にする部品——実は、#05のLEDもダイオードの仲間です。電気の流れに「向き」を作れると、回路の世界はぐっと広がります。
発展・応用アイデア
もっと知りたい人へ、3つの寄り道です。ひとつ目は「ロータリーエンコーダ」。見た目は回転型の可変抵抗器そっくりですが、中身は回転をカチカチというデジタル信号で数える別物で、何回転でも回せます。マウスのホイールに入っているのはこちらです。ふたつ目は「ジョイスティックの分解」。壊れたゲームコントローラがあれば開けてみてください。スティックの根元に可変抵抗器が2個、直角に並んでいるのが見えます。みっつ目は「抵抗が変わるセンサーの仲間たち」。明るさで抵抗が変わるCdSセル、温度で変わるサーミスタなど、世の中には「環境に応じて抵抗が変わる部品」がたくさんあります。どれも今回の分圧と組み合わせれば、マイコンで読み取れる電圧に変換できます。つまみを人の手でなく自然現象が回す、と考えると分かりやすいはずです。