電子工作のきほん|#06 スイッチのしくみと使い方

スイッチのしくみと使い方 ── 電気の通り道を開け閉めする部品

部屋の照明、ゲーム機のボタン、キーボード、マウス。私たちは1日に何百回もスイッチを押しています。あまりに身近すぎて意識しませんが、スイッチは「回路の通り道をつないだり切ったりする」という、電子工作の根っこを支える部品です。前回までに学んだ閉回路の考え方がそのまま使えますし、しくみも目で見て分かるほどシンプルです。今回は押しボタンの中身をのぞくところから、ブレッドボードでの実験までを通して、スイッチを使いこなせるようになりましょう。

電子工作のきほん #06 スイッチのしくみと使い方(アイキャッチ)

1. スイッチの中身 ── 金属の接点をくっつけたり離したり

スイッチの仕事は、たった1つです。回路の途中にある2つの金属の接点を、くっつける(ON)か、離す(OFF)か。接点が触れていれば電気の通り道がつながって電流が流れ、離れていれば通り道が切れて電流は流れません。#02で学んだ「回路は一周つながってはじめて電流が流れる」という話の、その「つながり」を人間の手で操作できるようにしたものがスイッチです。

電子工作でいちばんよく使う押しボタン(タクトスイッチ)の中身を見てみましょう。ボタンの下には金属の板(ばねを兼ねたドーム状の板)が入っていて、ふだんは接点から浮いています。ボタンを押すと金属板が押し下げられ、2つの接点に同時に触れて、橋わたしのように電気をつなぎます。指を離せばばねの力で元に戻り、回路は切れます。

タクトスイッチの中身(離しているとき=金属板が浮いて切れている/押したとき=金属板が両方の接点に触れてつながる)

「押した感触がカチッとある」のは、このドーム状の金属板がたわむときの手ごたえです。つまりあのクリック感は、飾りではなく接点がつながった合図そのものなのです。

2. 種類と見分け方 ── 押している間だけ? 切り替えたまま?

スイッチにはたくさんの形がありますが、動きで分けると2種類しかありません。押している間だけONになるモーメンタリ型と、操作した状態を保ち続けるオルタネート型です。

よく使うスイッチ3種類(タクトスイッチ・スライドスイッチ・トグルスイッチ)と回路記号

タクトスイッチはモーメンタリ型の代表で、ゲームのボタンやキーボードのように「押した瞬間だけ反応してほしい」場面で使います。スライドスイッチやトグルスイッチはオルタネート型で、電源の入り切りのように「状態を保ちたい」場面で使います。自分の作品に「ボタン」が欲しいのか「切り替え」が欲しいのかを考えると、自然にどちらを選ぶべきか決まります。

回路図でのスイッチは、通り道が途中で開いている記号で描かれます。レバーが斜めに開いたこの形は「いまは切れているけれど、倒せばつながる」という見た目そのままの記号です。回路図では、スイッチは操作していない状態(押していない・OFFの状態)で描くのが基本ルールです。

3. 使い方 ── 回路の輪に直列に入れるだけ

スイッチの使い方は驚くほど簡単です。電流を入り切りしたい回路の輪のどこかに、直列に割り込ませる。これだけです。#05で作った「電池→抵抗→LED」の回路にスイッチを足してみましょう。

スイッチ入りのLED点灯回路図(電池3V→スイッチ→330Ω→LED)

スイッチが開いていれば、回路の輪はそこで切れているので、電流はまったく流れません。スイッチを閉じれば輪がつながり、#05で計算したとおり約3mAが流れてLEDが点きます。

I =(3 − 2)/ 330 ≒ 0.003 A = 3 mA

ここでひとつ、よくある質問に答えておきます。「スイッチは電池の+側と−側、どちらに入れるべきですか?」——答えは「どちらでも同じ」です。直列の輪はどこで切っても全体の電流が止まるからです。水道のホースをどこでつまんでも水が止まるのと同じ理屈です(マイコンを使う回路では置き場所に意味が出てきますが、それはこのコースの後半で扱います)。

4. ここに注意 ── 足のつながりとチャタリング

スイッチは壊れにくい部品ですが、つまずきやすいポイントが2つあります。

(1) タクトスイッチの4本足は「2本ずつペア」

タクトスイッチには足が4本ありますが、接点は2つしかありません。実は横ならびの2本ずつが、中で最初からつながっているのです。つまり4本足は「2本足×2組」。ボタンを押すと、この2組どうしがつながります。向きをまちがえて差すと、押していないのに最初からつながっているペアを回路に入れてしまい、「ボタンを押していないのにLEDが点きっぱなし」という不思議な現象が起きます。タクトスイッチは中央の溝をまたぐ向きに差すのが約束です。

(2) チャタリング ── 接点は一瞬バタつく

ボタンを押した瞬間、中の金属板は一発でピタッと接点につくわけではなく、目に見えない速さで数回はねてから落ち着きます。このため、押した直後のほんの数ミリ秒だけ、ONとOFFが何度もくり返されます。これをチャタリングといいます。LEDの点け消しでは速すぎて人間にはまったく分かりませんが、1秒間に何百万回も状態を読めるマイコンには「何回も押された」ように見えてしまい、誤動作の原因になります。今は「機械の接点はバタつくものだ」と頭の片すみに置いておけば十分です。対策はマイコン編でくわしく扱います。

スイッチの2つの注意(タクトスイッチの足は横ならび2本がペア・チャタリングでONとOFFが数ミリ秒バタつく)

(3) 定格にも目を向けておこう

スイッチにも「流してよい電流」「かけてよい電圧」の上限(定格)があります。タクトスイッチは小さな信号用なので、定格は50mA程度しかありません。LED1個なら余裕ですが、モーターのような大きな電流が流れる部品を直接入り切りするのには使えません。大きな電流を扱う方法は、#11のMOSFETの回で登場します。

5. 確かめてみよう ── 押すと光る回路

それでは#05の回路にタクトスイッチを足して、「押すと光る」を作ってみましょう。使うのは電池ボックス(単3×2=3V)、タクトスイッチ、330Ωの抵抗器、赤色LEDです。

押すと光る回路の実体配線図(電池3V→タクトスイッチ→330Ω→LED)

タクトスイッチは中央の溝をまたぐようにパチンと差しこみます。電池の+からの電気は、スイッチの上側の足に入り、ボタンを押している間だけ下側の足へ抜けて、抵抗→LEDへと流れます。組めたらボタンを押してみてください。押している間だけLEDが点き、離すと消えれば成功です。

余裕があれば、テスターの導通チェック(ブザーのマーク)でスイッチ単体を調べてみましょう。横ならびの2本足どうしに当てると、押していなくてもピーと鳴ります(中でつながっているペアだからです)。溝をまたぐ向きの2本に当てると、ボタンを押したときだけ鳴ります。さきほどの「2本ずつペア」を自分の手で確認できる、気持ちのいい実験です。

6. まとめと次のステップ

スイッチは、回路の輪に直列に入れて、金属の接点をくっつけたり離したりすることで電流を入り切りする部品です。押している間だけONのモーメンタリ型と、状態を保つオルタネート型があり、用途で選びます。タクトスイッチの4本足は横ならび2本ずつのペアで、溝をまたぐ向きに差すこと。そして機械の接点は押した瞬間にチャタリングでバタつくこと。この2つを知っていれば、スイッチで困ることはまずありません。

次の記事では「コンデンサ」を扱います。電気をたくわえて、放す——電池とは似て非なるこの部品は、チャタリング対策にも、電源の安定化にも顔を出す、縁の下の力持ちです。

発展・応用アイデア

もっと遊びたい人へ、3つの寄り道です。ひとつ目は「身のまわりのスイッチ分解観察」。壊れたマウスがあれば開けてみてください。中には小さなマイクロスイッチが入っていて、カチカチという音の正体が分かります。ふたつ目は「2個のスイッチで実験」。スイッチを2個直列に入れると「両方押したときだけ点く」、並列に入れると「どちらかを押せば点く」回路になります。実はこれ、コンピュータの中で計算を担うAND・ORという論理回路の原型です。みっつ目は「磁石で動くスイッチ」。リードスイッチという部品は、磁石を近づけるだけでONになります。ドアの開閉センサーなど、防犯装置の定番部品です。

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