電気ってなに? ── 電圧・電流・抵抗とオームの法則
電子工作のすべての土台になるのが、この回です。「電圧」「電流」「抵抗」という3つの言葉と、それらをつなぐ「オームの法則」。この3つの主役と1つのルールが分かると、このあと登場するどんな部品の話も理解しやすくなります。むずかしそうな名前が並びますが、水の流れにたとえながら、ゆっくり進めましょう。

1. そもそも「電気が流れる」とは?
電線の中には、目に見えないとても小さな粒「電子」がたくさんつまっています。電池をつなぐと、この電子がいっせいに同じ向きへ動き出します。この電子の流れが「電流」です。水道管の中を水が流れるのと同じように、電線の中を電子が流れていると思ってください。

電気の話は、水の流れにたとえると分かりやすくなります。これからずっとこのたとえを使うので、最初にイメージをそろえておきましょう。タンクから出た水が、管を通って流れていく。その様子を思いうかべてください。
2. 3つの主役 ── 電圧・電流・抵抗
電圧(V・ボルト)= 水を押し出す「水圧」
電圧は、電気を押し出す力の強さです。水でいえば、タンクの高さがつくる「水圧」にあたります。タンクが高いほど水は勢いよく流れますね。電圧が高いほど、電気を強く押し出せます。単位はボルト〔V〕。乾電池は1.5V、USBは5Vというように、電源にはそれぞれ決まった電圧があります。
電流(I・アンペア)= 流れる「水の量」
電流は、実際に流れている電気の量です。水でいえば、1秒間に管を通る水の量にあたります。単位はアンペア〔A〕。電子工作では小さな電流を扱うことが多いので、その1000分の1の「ミリアンペア〔mA〕」もよく使います。1A = 1000mA です。
抵抗(R・オーム)= 流れにくさ=「管の細さ」
抵抗は、電気の流れにくさです。水でいえば、管の細さにあたります。管が細いほど水は流れにくくなりますね。抵抗が大きいほど、電気は流れにくくなります。単位はオーム〔Ω〕。第4回で取り上げる「抵抗器」は、この流れにくさをわざとつくる部品です。
まとめると、電圧(押す力)が大きいほど電流はたくさん流れ、抵抗(流れにくさ)が大きいほど電流は流れにくくなる。この当たり前の関係を、きちんと式にしたものが次のオームの法則です。

3. オームの法則 ── 電気のいちばん大事なルール
電圧・電流・抵抗の関係は、たったひとつの式で表せます。
V = I × R (電圧 = 電流 × 抵抗)
この式は、知りたいものに合わせて3つの形に変形できます。電子工作では、この3つを場面に応じて使い分けます。
V = I R I = V / R R = V / I
言葉でいうと、「電圧を知りたいなら、電流×抵抗」「電流を知りたいなら、電圧÷抵抗」「抵抗を知りたいなら、電圧÷電流」です。三角形の上に V、下に I と R を並べた「魔法の三角形」という覚え方もあります。知りたい文字を指で隠すと、残った並びがそのまま答えの式になります。

計算してみましょう
例1:5Vの電源に、抵抗が250Ωの回路をつなぎました。流れる電流は?
I = V / R = 5 / 250 = 0.02 A = 20 mA
例2:3Vの電源で、20mA(0.02A)を流したいとき、必要な抵抗は?
R = V / I = 3 / 0.02 = 150 Ω
例3:100Ωの抵抗に30mA(0.03A)が流れているとき、抵抗の両端の電圧は?
V = I R = 0.03 × 100 = 3 V
やっていることは割り算とかけ算だけです。大切なのは、計算するときに単位をそろえること。電流はミリアンペア(mA)のままではなく、アンペア(A)に直してから式に入れます(20mAなら0.02A)。ここを間違えると答えが1000倍ずれてしまうので、気をつけましょう。
4. 電気が使う「エネルギー」= 電力
もうひとつ、よく使う言葉に「電力」があります。これは電気が1秒間にどれだけのエネルギーを使うか(仕事をするか)を表すもので、単位はワット〔W〕です。電力は次の式で求められます。
P = V × I (電力 = 電圧 × 電流)
オームの法則と組み合わせると、こんな形にも書けます。どれも同じ電力を表しています。
P = V I = I² R = V² / R

たとえば5Vの電源で20mA流れているなら、P = 5 × 0.02 = 0.1W です。電力は、部品がどれだけ熱くなるかに直結します。部品には「ここまでの電力なら安全に使える」という上限(定格電力)が決まっていて、第4回の抵抗器のところで詳しく説明します。
5. ここに注意
単位の接頭辞に慣れる
電子工作では、k(キロ=1000倍)、m(ミリ=1000分の1)、μ(マイクロ=100万分の1)といった接頭辞がよく出てきます。1kΩ=1000Ω、1mA=0.001A、1μF=0.000001F です。計算するときは、これらをきちんと小数や整数に直してから式に入れましょう。慣れるまでは、いちど全部「A」「Ω」「V」の基本単位にそろえてから計算すると安全です。

抵抗ゼロは大きな電流になる
I = V / R の式をよく見てください。R(抵抗)がどんどん小さくなると、I(電流)はどんどん大きくなります。R がゼロに近づくと、電流は理屈の上では無限大に近づきます。これがショート(短絡)の危険な理由です。電気の通り道には、必ず適切な抵抗(部品)があるようにしましょう。
6. 確かめてみよう ── 電池の電圧を測る
理屈を読んだら、テスターで実物を確かめてみましょう。デジタルテスターのダイヤルを「V(直流電圧/DCV)」に合わせ、赤いプローブを電池のプラス、黒いプローブをマイナスに当てます。乾電池なら1.5Vくらい、USBなら5Vくらいの数字が表示されるはずです。新品の電池と使い古した電池で電圧がどう違うか、比べてみてください。数字で見ると、電圧が実際にあるものだと実感できます。

7. まとめと次のステップ
今回は電気の3つの主役、電圧(押す力)・電流(流れる量)・抵抗(流れにくさ)と、それらを結ぶオームの法則 V = I R を学びました。さらに、電気が使うエネルギーである電力 P = V I も登場しました。この2つの式はこれから何度も使います。今すぐ暗記しなくても、各回でくり返し使ううちに覚えてしまうはずです。
次回は「回路のきほん」です。部品をどうつなぐと電気が流れるのか、直列と並列のちがい、そして「GND(グランド)」という大事な考え方を見ていきます。今回のオームの法則をさっそく使います。
発展・応用アイデア
もっと知りたい人へ、3つの寄り道です。ひとつ目は「交流と直流」。電池やUSBは一定の向きに流れる直流(DC)ですが、家庭のコンセントは向きが切りかわる交流(AC)です。電子工作はほぼ直流の世界ですが、違いを知っておくと家電のしくみも読めるようになります。ふたつ目は「電流はなぜプラスからマイナスへ?」。電子は実はマイナス極から出ていますが、電流の向きは歴史的な事情でプラスからマイナスと決められています。このずれを知っておくと、教科書の電流の矢印の意味が分かります。みっつ目は「身のまわりの電力」。スマホの充電器やドライヤーに書かれた「W」の数字を P = V I の式で読みとくと、身近な製品がどれくらい電気を使っているかが見えてきます。
▶ 次の記事:#02 回路のきほん